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診療科・部門

当院における結石治療について

 

ご挨拶

 秦野赤十字病院泌尿器科では、昨今の生活習慣の変化や高齢化に伴う尿路結石症の増加に対応すべく、内視鏡による結石治療に積極的に取り組んでいます。
 特に、巨大な尿路結石は地域完結型の医療を目指すべく2020年度より細径腎盂鏡を使用したminiECIRS手術で積極的に治療しており、症例数は増加傾向です。
 秦野市のみならず近隣市町村の方々により良い結石治療をご提案するために、結石専門外来も設置しましたので、積極的にご紹介を頂ければ幸です。

秦野赤十字病院泌尿器科医師(結石破砕担当) 笠原 亮

 

 

尿路結石症とは

 体質的要因や食事・運動などの環境要因などが複雑に関わり合い、尿の通り道(尿路)に結石を形成し、様々な症状をきたす疾患です。腎臓から尿管にできたものを上部尿路結石、膀胱より下流にできたものを下部尿路結石と言います。特に上部尿路結石は、頻度が多い上に、上部尿路(尿管)が閉塞することで腎不全や腎盂腎炎を起こし、高齢者や免疫不全患者では死亡する可能性もあるため、看過できない病気であるといえます。

 (出典:日本泌尿器科学会,他編.尿路結石症診療ガイドライン 2013 年版.金原出版;2013.)

尿路結石治療の流れ

①結石疝痛発作や結石性腎盂腎炎にて緊急の処置が必要な場合

 入院して尿管ステント留置術や、腎瘻造設術を行います。どちらも腎臓からの尿流を確保するためのチューブであり、手術自体は局所麻酔+鎮静の併用下で30分程度で終了します。ただ、腎盂腎炎の合併がある場合、約1週間は入院での抗生物質の点滴治療を要することが多いです。

②症状のない結石や、ステント等が留置され疼痛や炎症が改善した尿管結石

 麻酔科管理の元、手術室で内視鏡を使用した手術を行います。多くの場合は尿道から挿入する内視鏡で治療します(TUL)。大きな結石や、腎盂腎炎のリスクが高い患者さんには経皮内視鏡を併用するECIRS手術を行います。

・TULとは
 細い内視鏡(写真①)を尿道から挿入して、結石を直接観察しながら破砕します。


写真①:軟性尿管鏡

 破砕にはホルミウムYAGレーザーを使用します。破砕された石は、砂状になり流れてしまうものもありますが、一部は欠片になるので、これらはバスケットワイヤー(写真②)を使用して摘出します。


写真②:バスケットワイヤー

・ECIRS(エシルス)とは
 経皮的内視鏡をTULに併用する手術です。TULでは完遂できない巨大な結石に対して適応があります。腎臓を側腹部から穿刺して、ガイドワイヤーを挿入し、穴を拡張してから内視鏡を挿入します。以前は径の大きい内視鏡を使用していましたが、細径腎盂鏡(写真:③)を導入したため、腎臓からの出血リスクが減少しました。


 図①:エシルスの術式図(出典:Real-time simultaneous endoscopic combined intrarenal surgery with intermediate-supine position: Washout mechanism and transport technique
 September 2018Investigative and Clinical Urology 59(5):348  DOI:10.4111/icu.2018.59.5.348)


写真③:細径腎盂鏡

よくある質問

・手術の時に痛みはありますか?
 手術の際は麻酔科医による管理下にあります。ただし、手術後は尿道カテーテル留置に伴う違和感や、腎臓周囲の鈍痛などが数日残ります。

・どのようにして石を割るのですか?
 主にホルミウムYAGレーザー(写真④・⑤)という、特殊な医療用レーザーを使用します。高いエネルギーで効率的に石を割ることができる一方で、エネルギーのほとんどが水中で減衰するため、正常組織に与えるダメージが少なく、術中の尿路損傷リスクが低いという特長があります。


写真④:ホルミウムYAGレーザー


写真⑤:グラスファイバー

・入院期間はどれくらいですか?
 TULの場合は最短で3泊4日、ECIRSの場合は4泊5日からになります。術後の炎症がある場合や血尿が濃い場合は入院療養期間が伸びるので、あくまで目安と考えてください。

その他

・高額療養費制度について
 高額療養費制度は医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
 事前の申請など、手続きの詳細は加入されている健康保険組合、全国健康保険協会、市町村国民健康保険、後期高齢者医療制度、国保組合、共済組合までお問い合わせください。
 また、詳しくは厚生労働省webサイトをご覧ください。

 

 
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