安心で安全な医療を提供するため、院内における医療安全対策を一元的に統括し、これらを効率的に対応することを目的に医療安全推進室が牽引役となり、様々な医療安全活動に取り組んでいます。
メンバーは、医療安全推進室長(副院長)、医療安全管理者(医療安全専従看護師)、医療安全推進課課長(紛争担当者)、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、で構成されています。毎週1回会議を開催し、院内の安全情報を共有するとともに、インシデント・アクシデント報告書の要因分析、対策の立案、周知徹底を行うことにより院内の医療安全活動を推進しています
2023年10月1日付で当院の医療安全推進室長に就任した後藤です。前任地では2011年より副院長ならびに医療安全推進室長として医療安全に携わってきました。当院におきましても安全な医療を皆様に提供できるよう努めてまいります。
医療安全とは、わかりやすく言うと患者の皆様(及び職員も)を医療事故から守るということです。一口に医療事故といっても、名前や量の間違いといったヒューマンエラーから高度な医療に伴う合併症や副作用などといったケースまで様々です。また医療者側の過失の有無よっても対応・対策が異なります。それら多岐にわたる医療安全の範囲を網羅し対策を講じていくのが医療安全推進室の仕事になります。
医療は不確実さが伴うものでありどんな医療行為においても絶対事故をなくすということは不可能とされています。人間はミスをするものであるという考え方は今では医療に限らず多くの分野で認識されていますし、さらにもともと不安定な状態である患者の方々に対し、適切な診療を行っても時に思わしくない結果が生じることもあります。よって過失の有無に関わらず医療事故をゼロにすることはできません。しかし職員一人ひとりが安全に対する意識を高め、様々な対策をとって実践していけば、事故の確率を限りなく少なくし、さらに万一事故が生じたときも被害を最小限にとどめることが可能になると考えます。
かつて事故は、医療者の注意不足や技量不足といった個々の問題とされてきました。だが現在では、医療に限らず事故は組織で防ぐという考え方が一般的となり、医療現場においてもチームとして事故を防ぐということが必須とされています。そのためには心理的安全性の保たれているチームであることが必要で、良好な人間関係による緊密なコミュニケーションが大切とされています。そしてその根底には患者の皆様の安全を最優先とする考え方を浸透させていくこと、すなわち医療安全文化の醸成が重要と考えます。
以上述べましたことを推進し患者の皆様に安心して当院にかかっていただけるように様々な取り組みを行っております。その内容につきましては当室のHPを参照いただければ幸いです。
副院長・医療安全推進室長
後藤 亨
お名前確認の際に、患者にフルネームで名乗って頂き、生年月日を確認しています。また、院内にポスターを掲示を行い、ポスター内容がより患者・ご家族の目や耳に残るように、午前と午後1日2回、院内放送を実施しています。職員が率先して指を差したところを患者が確認できるよう、患者誤認防止に取り組んでいます。
入院時に患者アセスメントを行い、転倒転落リスク評価を実施しています。また、入院前の生活を理解し、環境の変化に伴う不安や苦痛を最小限にするために、患者に合わせた看護ケアを実施しています。特に、入院中の履物の指導、環境整備の実施など、安全な環境の提供に努めています。
また、転倒の要因の一つに様々なチューブ(点滴やドレーンなど)が患者さんに装着され患者さんの行動が制限されていることがあると考えています。もちろん治療に必要なものは装着せざるを得ませんが必要最小限になるよう常に医療チームで検討するようにしています
コロナ禍で全職員対象の研修ができませんでしたが昨年下半期より対面での職員研修を実施いたしました。60%の近くの職員が参加し参加できなかったものはDVDや動画配信で受講してもらい100%受講となっています。年2回開催の予定です。今後は外部講師を招いても講演も企画する予定です
コロナ禍でなかなかできませんでしたが今年度から室長初め推進室メンバーで月1回様々な部署をラウンドし安全対策を確認しています
安心・安全な医療の提供を目指して、マニュアルを整備しています。常に新しい情報を取り入れて、現状との見直しを行い正しい医療が提供できるようにしています。
ガイドラインを見直し、同意書などの整備を行いました。安全・安心な医療が提供できるように、手術説明や手術に伴う合併症等について、説明と同意に関する記録を残し、患者・ご家族の反応について記載しています。
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation:心肺停止時に心肺蘇生を実施しないこと)について、多職種チームで検討会を行い、ガイドラインを作成しました。
その骨子は本ガイドラインにおいて、DNARの指示は患者本人による決定を基本とすることであり、その意思に可能な限り寄り添いつつ、その意思が確認できない場合も含め、主治医ほか複数の医師、看護師などの異なる職種で構成される医療・ケアチームによって十分な検討を行ったうえで行うことを原則とし、その手順を明確に定めました。
CVCは心臓のそばの大静脈という太い血管にカテーテルを挿入して点滴を行うことにより薬剤や栄養を注入する行為で、様々な病態で行われます。多くの診療科で行われますが、やり方が医師によって(すなわち習った病院)様々であり、さらに合併症も多く時に致命的な事故が生じる手技とされています。しかし多くの施設で対策は不十分でした。一般に安全なCVCのためには
I. 適応の厳格化
II. 安全な穿刺手技等の標準化
III. 安全手技の教育体制の構築
が推奨されており、また危険な手技の実態を病院全体で把握し合併症の分析を行い更なる事故の予防に努めることが求められています。当院でもマニュアルは策定されておりましたがこのたび技量が不十分な医師が安易に行わないようにする認定制度を発足させます。基準に満たないものは原則施行不可とし今後研修を経て施行できるように研修システムも整備中です。
医療安全の分野にも様々な学会があり、また赤十字はじめ多くの研修の機会があります。これらに積極的に参加し学習をしています。また当院の取り組みを赤十字学会で発表し他施設の方とも交流していく予定です
2024年9月 更新